【ご質問】
お互いモチベーションを高め合えると思っているのですが、実際そうではなくデメリットが目立つのでしょうか。
同業を選んだ方がよい職業・避けた方がよい職業の傾向があれば知りたいです。
ちなみに私は漫画家です。 (30代前半 女性)
【回答】
ご質問誠に有難う御座います。
結論から言えば「好きになった人が同業だったからと言って避ける必要はないものの、わざわざ好き好んで同業を選ぶべきではない」というものになるでしょう。
あえて同業同士で結婚するべき状況は、同じ業種の企業が合併や談合をする際に人質代わりとして子息、子女を結婚させる時くらいなもの。それ以外の状況では好き好んで同業を選ぶべきではないでしょう。
上下が明確に出る
同業との結婚をオススメしない最大の理由が「上下が明確に出る」というもので御座います。
例えば年間ホームランを10本打つプロ野球選手と、単行本が10万部売れている漫画家であれば、社会的地位はどちらの方が上でしょうか?
この問いに明確な答えを出せる方はいらっしゃらないことでしょう。理屈をこねれば比較は出来ますが、HR10本と単行本10万部はそもそも単位が違うので比較のしようがありません。
それでは単行本100万部の漫画家と、単行本1万部の漫画家の場合はどうでしょうか?
これは明確に上下が出ます。社会的地位が上なのは100万部の漫画家であり、1万部の方は「あんな本が100万部も売れるなんて社会は間違っている」と負け惜しみを言う事しか出来ません。
同業の場合、数字で成果を比較”出来てしまう”のです。ホームランと単行本なら「まぁお互いすごいよね」で済ませられる話が、同業だと済ませられなくなってしまう。
この比較が人間関係に良い影響を与えることは御座いません。男たちが強固だと自称している「男の友情」とやらも、年収の差が露骨になった瞬間によく崩壊します。年収という1つの物差しで上下が決まってしまうのです。
相手の事情が理解”出来てしまう”
ご質問者様は自身の仕事を理解して貰えることをメリットとして提示されておりますが、私はむしろそれがデメリットになると考えております。
同業は仕事を理解することが出来るのではなく、否応なしに理解してしまうのです。可能ではなく強制。これがどのような問題になるかご説明させて頂きましょう。
例えばご質問者様が編集と何かしらで揉めたとします。かつての私ならばその発言を鵜呑みにして躊躇うことなく「その編集最低だね!」と同意できたことでしょう。
しかし曲がりなりにも漫画連載の経験がある私は、多少では御座いますが編集者の立場というものも理解してしまっています。ですのでご質問者様からの苦言を聞いたとしても、心の中では「(彼らにはこういう事情があったんだろうな)」と強制的に想像してしまうことでしょう。
理解は同意でも共感でも御座いません。むしろ無知だからこそ、状況を何も考えずに言葉だけを鵜呑みにして共感してくれるとすら言えるでしょう。
椿いづみ著 『月刊少女野崎くん』/(スクウェア・エニックス)
もちろん理解をしているからこその共感というメリットも御座いますが、デメリットとメリットを比較した時、私はデメリットのほうが大きく上回ると考えます。
他にも「理解されているからこそ、こっちの事情を組んでサポートしてくれる」というメリットは「理解されているからこそ、そのサポートが不要であるとバレる」とも言えます。バレるは言い過ぎにしても、理解されているからこそ不必要と切り捨てられることもあるでしょう。
理解は同意でも共感でも肯定でもないのです。理解は理解でそれ以上でも以下でも御座いません。そして理解が出来ぬものならば曖昧なまま肯定できる話も、理解が出来るからこそ叩き潰されることも極めて多いということはご理解されたほうが良いでしょう。
理解さえして頂ければ同意も共感も不要でございますが。
切磋琢磨は幻想
「友情・努力・勝利」でお馴染みのジャンプ漫画。しかしもしも「友情・努力・勝利」が世の普遍的な出来事であるのなら、誰も漫画でそれを求めたりはしないことでしょう。現実には滅多に存在しないからこそ、我々は漫画に「友情・努力・勝利」を求めているので御座います。
切磋琢磨はまさに「友情・努力・勝利」の典型と言えますが、この関係性が成立するためには極めて重要な条件を満たす必要があるでしょう。
それは金。
学校の部活・趣味のサークル・実家が太いなどの理由で稼ぐ必要がない。
このような金と無縁の関係でなければ切磋琢磨的な友情は生まれません。
負けた側は相手を恨み、いかなる手段を用いてでも相手を引きずり降ろしてくるのです。我々がジャンプマンガで「こいつ卑怯だな」と軽蔑するキャラクターこそが、ライバルに負けた我々の普遍的な姿と言えるでしょう。
『バクマン』で亜城木夢叶と新妻エイジが切磋琢磨できるのは、初期は若くて金の心配がないから、中期以降は彼らにはそれなりに金があり、相手に負けても生活に困るわけではないから。また1位と2位の切磋琢磨だからこそ漫画になりますが、1位と100位の切磋琢磨は強者による殺戮でしかありません。
ご質問者様がジャンプで連載をしている時に、旦那様が連載会議で落ち続けていたら、それでも切磋琢磨が出来るとお思いでしょうか?
まず出来ないでしょう。出来たとしても極めて不安定な関係であることは間違いないことと思います。圧倒的に勝ってる側からの「切磋琢磨してるね」なんて言葉は、負けてる側に恨みと憎しみしか抱かせません。
他にもデメリットがもりだくさん!
最後に細かいデメリットを列挙していきましょう!
・顧客の奪い合い
表面化することは少なくとも、構造的に常に顧客を奪い合う競争相手になれます!
・椅子の奪い合い
表面化することは少なくとも、限られたポジションを奪い合う競争相手になれます!
・景気変動に弱い
漫画業界が不景気になった場合、2人とも収入が激減して一気に破綻します!
・修羅場が被る
忙しい時期が同じということは、ピリピリしている時期も一緒!
・話題が仕事に偏る
どうしても話題は漫画のことが多くなり、仕事とプライベートの境目が曖昧になれます!
必要なのは理解ではなく不干渉
同業との結婚はメリットがないとは言いませんが、デメリットの方が大きいと私は考えます。ただし「同業」と「同職場」は異なるということをご理解くださいませ。
例えば医者と看護師は同職場では御座いますが、同業ではないでしょう。
というのも今回挙げたデメリットの中でダントツで問題なのが「上下がはっきり出る」なので御座います。
医者と看護師では評価される軸が異なるので、明確に上下は出ません。しかし特に漫画家のような職業は「発行部数」という極めて単純かつ圧倒的な数字によって上下が出てしまうのが問題でしょう。「発行部数」を盾に取られれば、負けている側は何も言えなくなる。絶対にその武器を使わないとしても、その武器を手にしてしまうことがすでに問題なのです。
もしも使わないから平気と仰るのであれば、私はこれから死ぬまでご質問者様の頭に実弾入りの拳銃を向け続けましょう。ご安心ください、私が引き金を引けば死にますが、私は決して引きませんから。
とは言えもちろん、好きになった相手が同業だったからと言って、それを理由に止めておけと言う気は御座いません。あくまでも”わざわざ狙うべきではない”と言っているので御座います。
それに先ほどのデメリットを除けば、生活スタイルが似ているなど同業のメリットがあるのも事実でしょう。会話が漫画の話ばかりになるというのも別にデメリットばかりでは御座いませんし、修羅場が近いのだって言い換えれば休みが近いとも言えるのです。
そもそもご質問者様が本当に望んでいるのは理解ではなく不干渉ではないでしょうか。要するに「修羅場だから邪魔するな」とか「年末は邪魔するな」とかその程度の話。これは理解ではなく、自我の強さで決まります。
良く言えば寛容、悪く言えば無関心。結婚相談所のプロフィールには「親との同居の有無」とか「タバコの有無」などの希望を選ぶ項目が御座いますが、その選択項目の多くで「どちらでもいい」「気にしない」に丸をしている方を選ぶべきでしょう。
とら婚より一言
いかがでしたか?
本来の目的を忘れて脇に逸れる事が人生ではあると思います。今回の内容としては自分の仕事をよく理解してほしい(不干渉)という内容が重要だったと思うのですが、推測で違う選択をしてしまうのは婚活でも良くあるケースです。似たようなケースで趣味を理解して欲しいから同じ趣味の方を選んでしまうのも良くあるケースですが、重要なのは同じ趣味だという事ではありません。
ガンダムが好きだったとしてもキャラ好きなのかストーリーが好きなのは世界観が好きなのかモビルスーツが好きなのか、人によって楽しみ方が異なるからです。大事なのは貴方の大切な物を尊重してくれる考え方を持っている方です。だからこそ趣味が同じかどうかではなく、すり合わせが行えるかどうかがとても重要になるのです。
とら婚ではそういう方を探すお手伝いをさせて頂いておりますので、悩みがある方は是非ご活用頂ければ幸いです。
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